Dunhuang


莫高窟を窺う 敦煌Dunhuang

ああようやく来た。ここに立ってタクラマカンの西方を睨む。ここまで。そして、ここから先。まさにシルクロードの入口と出口といっていい場所に敦煌莫高窟はある。色とりどりの窟のなかに、仏教の秘話がつまっているのだ。いくつもの窟の壁画を見て歩くうちに、印象は縺れ合い、感動した記憶も何処のどの窟のことであったか覚束なくなる。暗がりでライトに当たる部分が鮮明であるだけに、仏画の奔放さや、色彩の鮮やかさに、頭の中は撹乱されるのである。それにしてもこの5百とも6百ともいわれる洞窟は、どのような意図をもって彫られ、しかもこの小さなオアシスの辺の砂漠を選んで、その表現の意志が千年近くも持続してきたのか。この洞窟は石窟とは違い、石彫の力技で飾られてはいないし、外に現れる建築はない。ただただ、抱擁感や浮遊感がこめられた柔らかい内部のみが存在していて、それが堪らなく妖しいのである。