Kailasa


彫りだされた寺 Ellora

逆三角形のインド大陸は、日本のように長く伸びる島国に比べて地域を面的に捉え易い。このデカン高原の一郭も、いかにも石窟寺院の存在を納得させる地域にあるように思える。ただしインド大陸の大きさはただならないので、そのスケール感はあくまで大陸的だ。私が訪ねたのは初夏、暑くなる前のこの地域、丁度雨期にはいって緑がとても奇麗な時を選んだ。自然の懐に包まれてある幾つかの石窟遺跡のなかで、エローラはやや建築的な構成が外に表れている遺跡だろう。しかし、中央を占める石彫りのカイラーサナータ寺院は、奥行き81m、幅47m、高さというか深さというか33m、丸ごと岩から抉り出された建築であって、普通の建築の表れ方とは言いがたい。まさに自然の岩から彫り出した空間の存在感があって、築いてできていない建築がもつ重力の感覚もまた普通ではないのである。南北両翼に並ぶ石窟群はそれぞれの形をもって、石窟群を伝い歩きながらその不思議で多彩な空間体験を楽しむ、これもまた建築かと。