Khiva


ホラズムの王都 イチャン・カラの見張台 Khiva

よく塔に上らなければ気が済まぬ人がいるが、私はただ高くて見下ろす視点しかもたない展望台をあまり好まない。しかし、この「ボボの見張台」と呼ばれている展望台は、そんな私にとっても、その低さといい、素朴さといい、まれにみる満足を味あわせてくれた。

ジンギスカンを征服の狂気に走らせたといわれる富める王国ヒバは、いま栄華の姿を留めぬほどに縮んで見えるが、この内城イチャン・カラだけはなんとか古の記憶の芯を遺して、それほど高くなくそして粗末なこの見張台から眺めるのに丁度よいひろがり保っている。取り巻く砂漠の地平の一点に集まる宝石の原石の艶が丁度よく見渡せるといった釣り合だ。

足下に見える幾つかの記念建築物のなかで、地味ではあるが忘れてはならない二つの建築を眺めよう。ひとつは200本の柱をもつ金曜モスクの地に伏してうねる佇まい。モスクにしては珍しく完全な木構造であり、その古い形式をよく遺している。もうひとつはこれも小さな王の謁見の間で「麗しきローム」と呼ばれるロッジアである。こちらも中央アジアの建築を特徴づける貴重な原型の遺構で、見張台からその内部の青いタイルの模様までが覗ける。