Pagan


仏教の荒野  パガン ミャンマー

仏教の炎はインドから東方に燃え広がった。一時代はインド全域にひろまった信仰の炎は、山岳を超えて北方へ吹き上がり、そこから西風に吹かれるように沙漠を東漸し中国へ、ついには日本列島の大きな炎となった。一方、東南へ燃え立った炎は、このビルマの平地、イラワジ河を伝いメコン河をわたりインドシナ半島全域の燎原の火となった。
パガン(Pagan, Bagan)は11世紀からアノヤター朝 によって始まった仏教の国である。イラワジ河に抱かれるように、寺院とパゴダが突き建つ荒野がひろがる。ひとつひとつの建築はそれほどの出来栄とは思えないが、この黄金に輝く群像の彼方にこそ、浄土の記憶が立ち現れるのだ。
ここは私にとって、すでに燃焼の跡しか残らぬインドにくらべて、仏教誕生の地に近く、いまも仏教国の西端を守護する希有の風景として映る。
現在の国の治め方からみて、仏陀の慈愛との落差はおおきく、そして昨年のサイクロン被害も痛ましいかぎりだが、それもふくめて矛盾だらけのアジアにおける仏教の絶景は動じない。