Patan


古都の屋根の下で Patan 

バクタプールとともにカトマンズの古都であるパタン。われわれにとってなんという懐かしい眺めをもつ都であろうか。そう思うのは深々とした軒の連なりであり、ゆったりとした家並の影にある。それを支える肱木の軽やかなリズムやそこに佇む人々の群の姿にもよるだろう。私がもし若くて、十分な時間をもって研究するとなれば、多分「ダルマサーラ dharma sala」または「マンダパ mandapa」や「サッタル sattal」などという空間をテーマに選んで、愛する山々も近いこの辺りをうろついたことだろう。都市の中で生きている「覆われた空間」の意味を考えたいからである。巡礼者の休憩場所や近隣の集会所ともいわれる素朴な施設であるが、いまでも街のいたるところに点々と残り、人々が気持ち良さそうに憩っているこの「街の縁側」に、私は寺や宮殿より優れた文化価値をみとめるからである。その写真の何枚かは拙著『回KAIRO廊』にすでに載せている。