Varanasi


ヴァラナシー ガンガに立ちて

滔々としたガンジスgangaの流れに、身体を沈め、水を掬い、祈りを捧げ、朝日を拝す。黄金色に染まる朝靄を抜けて、死者を弔う薄青の煙が2つ3つ垂直に立ち上り始めた。こうして沐浴と葬送の朝が明ける。

ヴァラナシーvaranasiのガンジスのほとりに立つ。

この大河の彼岸に渡る橋はない。禊と葬送の此岸を離れて、大河の向こうは陽光に満ちた無。その陽光を受けて、今日もまた、生者と死者は、この曙の時を待って、ガンジスの流れに合流するのである。

この劇的な有様を、7kmにわたって河岸に連なる70ほどのガートghatが受け止める。すべてがすべてに解放されている訳ではないが、流れに向かって刻み込むその石段の連続は鋭く、水底を目指す壮大な造形だ。この神聖なる階段、祈りと別離の舞台は、歴史のどの記念建築物monumentよりモニュメンタルだ。

これぞ、信じるもののみが造り得た宇宙の風景にちがいない。