そう考えると,遠近の視点によって理解に食違いがあることがあっても,その齟齬のあることにこそ意味があるのではないか.近づいて驚嘆した対象も,遠のいて見ると自然に見えることがあるし,遠景では独特な形態も,近景になるにしたがって普通の形に変わることがある.この食違いの溝が,遠近の視点の重要性を語っているように思える.

[ 『メキシコ・スケッチ』—遠近の視点 ]